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やじるし永田町発 わたしの視点 「企業の意識改革必要」
 

 新卒者の就職環境が好転し、大卒の就職内定率も2005年度に77・4%と前年度比3・1%上昇した。06年度はさらに上昇すると予測されている。しかし、ここ数年の就業構造の変化に伴い、フリーターの数は1992年の101万人から04年には213万人へと倍以上に増加し、「家事手伝い」も含めたニートの数は05年で85万人を数える。また、若年層男性の非正規雇用率は就業者全体の3割近くに達し、女性にいたっては35歳以下で4割、それ以上の年齢層になれば、就業者の半数以上が非正規雇用という現実がある。

 このような現状は、いくつかの類型に分けて分析していく必要がある。例えば女性は、ライフステージに応じて就業形態を変えていく必要に迫られている。就業女性の3割が結婚を機に退職、残りの職業継続者についても7割が妊娠・出産を機に退職している。「育児休業」を取得できる女性は全体の2割にすぎないという厳しい現実を直視する必要がある。

 35歳以下の層については、長引く不況のなか企業が人件費を削減するべく、雇用形態を正規社員から非正規社員へと変化させた影響が大きい。対象業務の拡張や期間の拡大といった派遣法の規制緩和もこれを促進している。90年代初頭の非正規社員の大半を占めた「夢追い型」「高所得追求型」は01年には13・7%に減り、正規社員を望むも、やむを得ず非正規社員として働いている人が40%近くに上っている。

 ニートをみると、85万人のうち約半数が就業を希望しているものの、10万人以上が病気やけがで求職活動ができず、また自信喪失的な理由で就業しない人が15万人もいる。10年前にはニートのいる世帯は高所得層が多く、最終学歴も短大・大卒者で半数を占めていた。しかし、最近では300万円未満の所帯の割合が増え、中・高卒者が7割を占めるなど、かつての高所得世帯子女の高学歴者の「モラトリアム」から、低所得世帯の「取り残され型」へとニート像は変化している。

 このようなニート・フリーターの統計は35歳で途切れている。30歳から34歳のニートの中で就業経験のない人は4割以上。35歳以上になると、就労意欲のない人は「失業者」にも区分されず統計の対象とならないため、ニート・フリーター数は潜在的にもっと多いと考えられる。高年齢のニート・フリーターは、正規従業員としてのキャリア経験のないまま年を重ねるため、能力開発の機会も不足している。日本版デュアルシステムのさらなる普及が望まれる。

 今、ニート・フリーターに対する企業の意識は非常に厳しい。ニート・フリーターを正規従業員として採用する意思がないと、6割を超える企業の人事担当者が答えているのである。年功序列制が崩壊した今こそ、再チャレンジ政策がクローズアップされる中で、履歴書の空白期間に寛容になり、非正規雇用の期間も一つのキャリアとして認知する企業の意識改革が必要なのである。

 

(フジサンケイビジネスアイ 2006年11月23日付)